投票事務4年生からの「選挙に行こう」という話

2020年7月5日は4年に一度のビックイベントである東京都知事選挙の投票日です。まぁ4年に一度とは限らないのですが(前職2人の顔が走馬灯にように頭をよぎります)。

私は2017年から地元の投票所の投票事務作業の仕事に携わっており、気が付けば今年で4年目となります。月日が過ぎるのは早いものです。投票事務作業とは、投票所を設営したり、受付で入場整理券のはがきを投票用紙と交換したりする仕事です。

選挙のたびに毎回思うことがあります。それが「若者世代の投票率の低さ」です。マスメディアはデータを用いてこの事実を耳にタコができるほど偉そうに講釈を垂れますが、皆さんはどこか他人事のように聞こえていると思います。私もこの仕事に携わる以前は「そんなもんなんだー」程度にしか受け止めていませんでした。

しかしいざ現場に立ってみると、その投票率の差に著しい差があることを肌で実感することができました。私の数少ない友人も、選挙に行くという人は悲しいことながら少数派です。

選挙に行くことが億劫である人の共通認識として、「私1人が票を投じたところで結果は変わらない」という考えがあります。また、今回の選挙に関しては「どうせ〇〇さんが勝つんでしょ?」という雰囲気が漂っています。しかし、これらの理由で選挙に行かないことは非常に「もったいない」ことなのです。

選挙とは立候補者の中から主権者の多数決によって代表者を決定するイベントです。しかし、選挙の目的はそれだけなのでしょうか。これだけが目的であると考えてしまうと、「私1人が票を投じたところで結果は変わらない」や「どうせ〇〇さんが勝つんでしょ?行っても意味ない意味ない」という考え方に陥ってしまいがちです。

どのような選挙でも選挙の後には年代別の投票率のデータが算出されます。このデータを見て次の選挙の立候補者は政策を考えます。例えば中年世代の投票率が高ければ子育てや労働に関する政策を前面に押し出し、老後世代の投票率が高ければ医療費などの社会福祉の充実を訴えます。若者の投票率が低ければ、若者のための政策は票につながりにくいため無視されるようになります。これでは若者が生きにくい世の中になってしまいます。

東京都知事選挙の場合は当選ラインが数百万票であり、主要候補者以外の候補者がこのような票を取る事は難しいですし、他の主要候補者に関しても数百万票単位の死票が生まれてしまいます。正直自分の投じた票が死票となってしまう可能性が非常に大きい選挙となります。しかし、もしあなたが投票に行けば、あなたの世代の投票率を絶対に確実に上昇させることができます。

新宿区は人口が約30万人なので単純計算で20代の若者が3万人いるとしましょう。あなたが投票すると20代の投票率が0.003%上昇します。友人2人を誘って一緒に行けば0.01%投票率が上昇します。もしこの記事を新宿区の20代が100人閲覧して、100人が同じ行動をとれば投票率は1%も上昇します。選挙というと有権者が多すぎて自分の意見は全体から見たら無いに等しいと感じるかもしれませんが、こういった観点でみるとそこまで小さな数字ではないと感じることができるのではないでしょうか。

このように、選挙は将来の立候補者に「ちゃんと私たちの世代は立候補者を見ているんだぞ。私たちの世代のことを考えないと痛い目に合うぞ」とプレッシャーをかけることができる場でもあるのです。

それでも、当選しそうな候補者以外の候補者に票を入れることは無駄な行為となってしまうと思いますか?どうせこの人は勝てないから、と考えるとはしょうがないことであると思いますか?もう少し考えてみます。

有権者の多くの興味は当選者だけかもしれません。しかし、マスコミや政治家は「どの候補者がどれだけの差で負けたのか」ということを注目しています。たとえば老人世代をメインターゲットに選挙活動をしたA氏が当選し、子育て世代をターゲットにした選挙活動をしたB氏がA氏と僅差で落選した場合、これからの選挙では子育て世代に向けた政策も充実させていくべきと考えるでしょう。一方、若者世代に強く訴えかける候補者が全く票を取れなかった場合、次から若者世代を大切にする公約を掲げる候補者は少なくなるでしょう。

また、現在のマスメディアは政党から推薦を受けている候補者を「主要候補者」とよび、その候補者だけをクローズアップして報道するという悪習が存在します。同じ供託金300万円を払いながらこのように報道に差をつけることは平等な選挙と言えるのでしょうか。

選挙戦初期の頃に立候補していた七海ひろこさんは今回立候補を取り下げました。その理由として以下のように述べられています。
(ここから引用)
 同党本部(港区)で記者会見した七海さんは、マスコミが「主要5候補」とする候補者に偏って報道していると強調。「チャンスの平等がなく、民主主義が消滅している。撤退を決断し一石を投じる」と説明した。街頭演説など選挙運動はもう行わないという。
(引用ここまで:東京新聞https://www.tokyo-np.co.jp/article/38014 2020年7月2日最終アクセス)

もし主要候補者の最下位と主要候補者以外(いわゆる泡沫候補者)のトップが逆転したらメディアはどのように報道するのでしょうか。たとえ逆転しなくとも、票が同程度であった場合にも泡沫候補者を無視するのでしょうか。そして、そこまで票を獲得した候補者が次回の都知事選にも出馬表明をした場合、メディアは今まで通りの報道を続けるのでしょうか。

このように無駄な・意味のない投票は1票も存在しません!たとえあなたが票を投じて候補者が落選してしまったとしても、その行動はあらゆる方面に影響をもたらします。ぜひ、投票日までにできれば立候補者全員の公約を読み、ホームページやTwitterなど「第3者の偏向の意思が介在しない」メディアを通して人柄を知り、万全の態勢で投票日を迎えて頂きたいです。

確かにこんなにも多くの立候補者の中から投票する人を一人決める作業は骨が折れる作業です。しかし、選挙権は当たり前の権利ではありません。先人たちが命懸けで勝ち取った権利です。日本国憲法を三大柱の一つである国民主権にかかわる最も重要なイベントが選挙です。どうしても候補者を一人決められなければ白紙でも良いのです。私も白紙投票をしたことがあります。受付で渡された投票用紙を記載台を介さず直接投票箱にドヤ顔で入れてやりましょう。

たしかに投票所に行くという行為自体が億劫です。きっと日曜日は蒸し暑いでしょう。天気も悪くなるかもしれません。もし面倒と感じたら、ぜひ投票所で事務作業をしている私たちを想像してください。朝6時過ぎから夜9時前までずっと投票所に拘束されています。何千人の有権者に投票用紙を渡し続けます。そんな奴らと比べたら1分で終わる投票など面倒でも何でもないと思えてきませんか?

この文章を読んで一人でも「選挙に行ってみるか」と感じてくだされば嬉しい限りです。ぜひ投票に行き、次の日に市の選挙管理委員会のHPの開票速報をみて、自分が入れた候補者の得票数を見てください。もしあなたが選挙に行かなかったらその数字は1つ減っていました。確かにあなたの票は民意として反映されています。そんなことに思いをはせてニヤニヤできるようになったら、既にあなたは立派な選挙マニアです。

投票日当日、暑い投票所で皆様をお待ちしております。もしかしたらあなたの投票所の受付は私かもしれませんよ……

追記:当日は投票所が混み合う可能性があります。新型コロナウイルス予防のためにも、是非との期日前投票をご利用ください。ちなみに期日前投票は「期日まえ投票」ではなく「期日ぜん投票」がより正確な読み方であるって知っていましたか?といっても現在総務省はどちらの読み方も正しいと認めているのでどちらで読んでも大丈夫です。