物理の原理と定義の話

こんばんは。東雲倫也です。

今日は物理における原理と定義と法則の話をします。

話を簡単にするためにNewton物理に話を絞りましょう。Newton物理における原理とはなんでしょうか。

原理とは、証明をすること無く認める仮定のことです。どういうことだ?

分かりやすい例として算数を考えます。三角形の各頂点の和は180度ですよね。これは証明することもできます。しかし、1+1=2という数式は証明することができません。なぜなら数学の世界では1+1は2であると「証明すること無く」決めているからです(この取り決めをペアノの公理と呼びます)。数学の世界では証明できるものを定理、証明せずに認めるものを公理と呼びます。そして、物理の世界では公理が原理、定理は法則になるのです(ここは少し注意が必要です)。

では、Newton力学において証明無しに認めている仮定とは一体なんなのでしょうか?それが「Newtonの運動の3法則」です。ついさっき法則は数学における定理と同じで証明ができると説明しましたが、これに関しては例外です。これ以外の「エネルギー保存則」や、「運動両保存則」は証明ができます。

それでは運動の3法則とはどのようなものだったでしょうか?これは、①慣性の法則②運動方程式③作用反作用の法則 の3つからなる法則でしたね。Newtonは身の回りのあらゆる物体の運動はこの三つの法則に従って説明できることを発見しました。ではどのように発見したのでしょうか?

答えは簡単です。Newton何度も何度も運動を観察し、あらゆる物体のあらゆる運動がこの3法則に従っていることを「経験的に」確かめたのです。「100回実験して100回この法則に従っているからこの法則は正しいはずだ」と考えたわけです。

「なんだ、証明されているじゃないか」と思いましたか?しかしこれは証明ではありません。なぜ100回法則に従ったからと言って、101回目もこの法則に従うと言えるのでしょうか?言えませんね。つまり、Newtonの運動の3法則は証明できない「原理」なのです。(※最小作用に原理から証明できるという人は、最小作用の原理を証明してくださいね)

このように運動の3法則を正しいと仮定すると、運動方程式からエネルギー保存則や運動量法則が「証明」できます。しかし、我々は証明できていない「原理」からあらゆる法則を「証明」していることを忘れてはいけません。運動量保存則もエネルギー保存則も「運動の3法則が正しければ」正しいという条件が付くのです。

これが力学における「原理」と「法則」の違いです。それでは「定義」とは何でしょうか。

定義とは、言葉の説明のようなものです。例えば運動方程式は「質量と加速度の積は力に等しい」ですが、質量とは何でしょうか?加速度とは何でしょうか?力とは何でしょうか?これを取り決めるのが定義です。

例えば、加速度の定義は位置の2階微分です。言い換えれば、位置の2階微分した量と「加速度」と定義しているのです。すなわち、
x=(at^2)/2+v_0t+x_0
v=at+v_0
v^2-v_0^2=2ax
という式はある意味定義から導き出された式ということになるますね。

物理に限らず、学問を学ぶ際には何が原理で有るかをしっかり見定めることが重要になります。何が原理で、その原理からどのような法則が証明され、その法則からどのように新しい法則が証明されるのか、これをまとめるだけでも物理の全体像がすっきりするでしょう。

高校物理は公式の丸暗記なのでこの繋がりが非常に見えにくいです。先ほどの説明で「エネルギー保存則は運動方程式から導ける」と説明しました。すなわちこの2つの間には明確な主従関係があるのです。しかしながら教科書ではこの二つが同列に、結果だけが載っています。これでは全体像もクソもありません。

これから物理を勉強する方も物理がよくわからないという方も、是非今日説明した「原理」と「定義」と「法則」を意識してみて下さい。きっと学問の世界の見え方が変わると思います。

物理は簡潔な学問です。公式の丸暗記で終わらせるのは大変、というよりも勿体無いです。是非とも物理の本当の姿を見てあげて下さい。